丸の内朝大学ヴォイス

様々な人々があつまり、つくりあげる丸の内朝大学。
それぞれの視点で見る朝大学とは?

鈴木寛(参議院議員)

2012.04.21

鈴木寛(参議院議員)

丸の内からはじまるコミュニティのカタチ

丸の内朝大学の学び場から、さまざまなコミュニティが生まれています。 これからの社会におけるコミュニティの役割について、丸の内朝大学企画委員会事務局の井上奈香が鈴木寛議員に話を伺いました。


共通の「スペース」「言語」「関心」から生まれるもの

井上 鈴木さんは、1997年にコミュニティによる問題解決、「コミュニティソリューション」を提言されてから、新しい公共への先鞭として、コミュニティスクールの推進など、さまざまな取り組みを実践されてきました。なぜ今、コミュニティが重要なのでしょうか。

鈴木 これまで私たちが直面する社会や経済の問題は、政府か市場によって解決するというものでした。富国強兵や経済成長が国の目標だった時代には、政府による画一的な社会システムが効力を発揮していましたが、世の中が多様化し、幸せ感や人生観が人それぞれになってきたことで、ガバメントソリューションの弱点が露呈してきました。また、これからますます大事になってくる教育や医療など、対面コミュニケーションがベースで情報の非対称性(※1)が存在するサービスでは、マーケットソリューションが十分には機能しません。つまり、従来の方法では対応できない問題が非常に増えてきたことで、新たな問題解決の思想として、「コミュニティソリューション」が重要になってきたんですね。多様な立場の人が知恵を持ち寄って、熟議を重ねることで、理解を深め、その過程のなかで、創発的コラボレーションが生まれ、問題が好循環する。自発と協働のコミュニティをつくっていくことが世の中を変える鍵になるんです。

井上 コミュニティと一口に言っても、人によって捉え方はさまざまです。集まったものの、まったく機能していないという事例もたくさんあると思うんですが、鈴木さんはよいコミュニティについてどうお考えでしょうか。

鈴木 コミュニティというのは、結果です。コミュニケーションが継続されることで、コミュニティになります。よいコミュニティの条件は、熟議と創発的協働があること。外部の力によって動かされているものは、本物のコミュニティではありません。コミュニケーションに必要なのは、共通の「スペース」、「言語」、「関心」です。もちろんバーチャルなコミュニケーションもありますが、やはり人間は五感が大事で、基本的にはフェイストゥフェイスのリアルスペースで、イノベーションは醸成されると思います。

井上 だからこそ、その場所や地域ならではのものが生まれてくるということなんですね。大丸有地区(※2)において、学びの場を提供する丸の内大学も、2012年春に通算10期目を迎え、多様なコミュニケーションが生まれています。受講生が楽しみながら社会課題の解決に取り組み始めました。

鈴木 素晴らしいですね。丸の内朝大学には、大丸有地区という共通の「スペース」があり、そこでは、共通の「関心」に基づくコンテンツが提供されています。コンテンツを学んだ人たちのコミュニケーションが、コラボレーション、クリエイションにつながっていく。そうしたことが継続的に行われている状態が文化の定義ですので、丸の内朝大学によって、大丸有地区はとてもカルチュラルな場になっていく可能性を秘めています。
集まった人たちがうまく創発するようにオーガナイズし、ファシリテートすることが、丸の内朝大学の大事な役割だと思います。丸の内はビジネスの最前線、仕事をする場所というだけではもったいないのです。五感をすべて駆動させて、脳をフルに使う、さまざまなアクティビティの可能性を増やしていくことで、もっと多様で重層なコミュニケーションが生まれ、丸の内はそれぞれの興味や関心に基づいたテーマコミュニティのポータルになっていく。そうすることで、より多くの人が集まり、付加価値が出てくるのではないでしょうか。

井上 共通スペースでの学びによって生まれるコミュニケーションが、新たなコミュニティ形成につながるんですね。

鈴木 学びというのはよりよい人生をつくるものです。提供されるものの質や量を増やすことが限界にきている現代において、すでにあるものの意味付けや生かし方こそが、幸せに直結します。そのきっかけとなるのがまさに学びです。豊かなコミュニケーションによって共通言語を獲得すれば、新たな対話を始めることができます。丸の内朝大学は、さまざまな世界で対話するための言語・文化・価値体系を身につけ、使いこなせるようにしていく、そしてよりよい人生をつくるための入口になるのだと思います。

※1 情報の非対称性:人々が持つ情報量に格差がある状態

※2 大丸有地区:東京駅前の大手町・丸の内・有楽町地区

歴史的背景を持った「丸の内」だからこそ意味がある

鈴木 1868年の明治維新では、世の中の主役が幕府から政府に置き換わりました。そして2012年、丸の内朝大学が、いわば政府から学芸府(学びの場)に世の中の主役が代わるという“革命”を起こすのだと思います。丸の内という場所は、幕府の丸の内であり、その後は日本の近代をつくり、高度経済成長の中心にもなりました。そして、ガバメントソリューションからマーケットソリューションへと移行する時代の流れの中で、いずれの拠点としても機能してきました。つまり、幕府から政府となり、さらにはマーケットの中心的役割を担ってきた丸の内が、今度は学芸府になるということは、歴史的に見ても極めて意味のあることです。
今後社会を主導していくのは、政府や、経済団体と共に、学芸の場である学芸府=ユニバーシティであると考えています。ユニバーシティの元は宇宙(universe)ですから、学と芸、つまり知的でアーティスティックな学術・芸術を中心とした大きな世界観で、ソリューションが展開されます。

井上 なるほど。丸の内が学芸府となること、大丸有地区で朝大学を行うことは、歴史的に見ても理にかなったことなんですね。

鈴木 その通りです。全国各地に丸の内という地名がありますが、例えば、日本中の丸の内で朝大学ができれば、テーマコミュニティのネットワークとして連結されて、さらに新しい展開が考えられます。東京の丸の内でできたコミュニケーションをスピンオフすることで、これまで県庁などの地方政府の活動の場としてしか利用されてこなかった全国の丸の内に、さまざまなクリエイティブ、カルチュラルなコミュニケーションを発生させることができ、いろんな人たちが集まってくるきっかけになります。そうすると、観光で各地を訪れた時に、まずは丸の内に行ってみようという動機づけにもなるんです。

井上 ますます可能性は広がりますね。全国各地とのつながりに関して言えば、丸の内朝大学から生まれたコミュニティソリューションは、特に地域との連携にその威力を発揮しつつあります。

鈴木 まさにそれが、冒頭で申し上げた「創発的コラボレーション」です。あらゆる知と人材の交流が行われる場となった丸の内朝大学が、コミュニティソリューションの先進的なプロジェクトになることを期待しています。

※本記事は『丸の内朝大学YEAR BOOK2011-2012』に掲載された内容を再編集したもので、肩書き、名称等は2012年2月取材当時のものです。


鈴木寛(参議院議員)

1964年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省、慶應義塾大学助教授などを経て、2001年参議院議員選挙に当選。参議院文教科学委員会理事、民主党政調調査会副会長、文部科学副大臣などを歴任。コミュニティ論、メディア論に詳しく、教育通としても知られる。著書に『「熟議」で日本の教育を変える』など多数。

http://suzukan.net/

井上奈香(丸の内朝大学企画委員会事務局)

三菱地所(株)都市計画事業室環境ユニット兼エコッツェリア協会コミュニケーション・デザイナー。2006年からエコッツェリア協会の立ち上げに携わり、丸の内朝大学のアカウントマネージャーのほか、「丸の内SUPER COOLBIZ」など大手町・丸の内・有楽町地区の環境活動の推進に携わる。

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