丸の内朝大学ヴォイス

様々な人々があつまり、つくりあげる丸の内朝大学。
それぞれの視点で見る朝大学とは?

鈴木英敬(三重県知事)×篠田昭(新潟市長)×合場直人(エコッツェリア協会副理事長)

2012.06.12

鈴木英敬(三重県知事)×篠田昭(新潟市長)×合場直人(エコッツェリア協会副理事長)

「都市」と「地域」の新しい関係、成長へのアプローチ

今は東京で働いているけれど、自分の生まれ故郷をもっと元気にしたい。いずれは、地元と東京を結ぶ仕事がしたい。そんな、地域を盛り上げる力になりたいと考えるビジネスパーソンに向け、2011年度に新規開講したのが「地域プロデューサークラス」です。クラスでは、様々な地域プロデュースの事例や手法を学ぶとともに、実際に現地に赴くフィールドワークを行い、都市生活者としての知見を生かして、地域の問題を解決しています。 2011年度は、春・夏学期に新潟、秋学期に三重を取り上げました。活動は各メディアで紹介されるとともに、丸の内朝大学にしかない学問として多くの共感を呼んでいます。今回は、クラス実施にご協力をいただいた、三重県の鈴木英敬知事(写真右)と新潟市の篠田昭市長(写真中央)に、エコッツェリア協会副理事長の合場直人(写真左)が、「都市と地域のこれから」について話を伺います。


受講生に気づかされた地元の魅力

合場 受講生の中には、地元に戻って地域活性化に取り組み始めた人がいたり、新潟の企業に就職した人がいたり、クラスが新たな展開に結びついています。三重、新潟、各地域でクラスを実施した成果や効果について、どのようにお考えでしょうか。

鈴木 三重の価値の共感者が増えたということが一番大きな成果ですね。受講生の皆さんには、三重の“熱い”人と会って現場を体感するフィールドワークを通して、様々な活性化提案をいただきました。
日本の土鍋シェア80%を誇るといわれている三重県・萬古焼(ばんこやき)の魅力を都市生活者に伝えるイベント「萬古食博覧会(ばんこくはくらんかい)」や、電動自転車で都内にある三重ゆかりの地をゆっくりと回るツアー「結ポタリング」など、受講生自身が自主的にプロジェクトを進めてくださっています。こうした活動も、三重の価値に共感していただいたからこそで、地域の人と同化して、地域活性化についてともに考え、PR活動や人的ネットワークづくりに尽力していただいたことに大きな意味があると思います。また、都市生活者の目線がダイレクトに伝わってきたことで、自分たちの目指すべき方向について新たな気づきを得るいい機会にもなりました。

篠田 私も都市生活者の目線を知ることができたことはとてもよかったと思っています。地元に根を張って暮らしてきた人は、地域のよさについて客観的な評価にふれる機会が少なく、新潟には大したものがないと思い込んでいるところがあるんですよね。例えば、冬の田んぼに白鳥が飛来している様子は、地元にとっては見慣れた風景の一つで、何の特別感もありませんが、目にした受講生の皆さんはとても喜んでくださったんです。これが地元にとっては予想外の驚きで、今回多くの受講生の方に来ていただいたことで、地域が持つ本来の魅力を再発見できました。
また、これまでは地域の産品を、東京に売り込んだものの、あまり喜ばれないということがよくありました。都会の人が求めるものと地元の人がいいと思うものには、やはり差があるんです。ですので、最前線でビジネスをしている方々と新潟で熱い思いを持って活動している人たちが、クラスを通して、まさに“ノーサイド”で遠慮なく何でも語り合えたことは、大きな成果ですね。

※写真は、上段左が地域活性化案の受講生発表、右が萬古食博覧会の様子。下段はともに地域プロデューサークラスのフィールドワーク風景。左が新潟県「諸橋弥次郎農園」でのビオトープ、右が三重県・相差かまどの海女小屋での様子。

合場 グローバル化の中で、丸の内は人々が交流し、相互作用によって知恵を生み出す場として変化を遂げてきました。丸の内朝大学もその一つです。都市を心臓部といいますが、あくまで心臓は血液を循環させるポンプ役で、実際には血液が体中を駆け巡って、それぞれの場所をつないでいます。今回の地域プロデューサークラスを通して、まさに丸の内の人材と地域がうまく循環しはじめた気がします。

篠田 昔から日本は「つがいの文化」で、二つのものが組み合わさって一組になるからこそ、魅力がともに高まるといわれています。しかし、都市と地方の関係でいえば、いつの間にか「対」ではなく「対立」になってきたと思うんですね。今回丸の内朝大学の皆さんが来てくださったことが、「つがいの文化」を復活させるきっかけになるんじゃないかという気がしています。都市で様々な風を背負っている風の人と、土地に根付いた土の人が出会うことで、おもしろい化学反応が起きているんです。元々は、新潟県内で「対」をつくろうと試行錯誤していたわけですが、離れたところから来てくださった人たちの方が、地域にとってインパクトがあった。地元の人が元気になったんですよ。

地域活性化のカギは情報ではなくコミュニケーション

合場 地域プロデューサークラスは2011年に始まったばかりですが、今後丸の内朝大学に期待されることや、次のステップとしてもっとこんなことができればというアイデアについて、お聞かせいただけますでしょうか。

鈴木 丸の内という場所だからこそできるのは、都市と地域だけでなく、「ローカルトゥローカル」、地域同士を結び付けられる人材育成や交流の場の創出ではないでしょうか。
地域の人たちは、相手のニーズに沿うことより、自分がいいと思うものを売りたいという意識が強い。だから、地域同士が出会う場で、それぞれが自慢のものを持ち寄っても、互いの心に届かず、すれ違いで終わることがよくあるんです。そこを、丸の内の人たちが、それぞれの魅力をうまく伝えてあげることで、お互いの理解が深まり、地域同士も噛み合うようになるんじゃないかと思います。

合場 まさに地域プロデューサークラスの受講生は、周りの人に「新潟のあのお米と三重のこの食材を合わせるとおいしいよ」という話を自然にしていたりするんですよね。ただの情報ではなく、自ら体感したことをコミュニケーションに結びつけられるというのは、丸の内という人や情報が行き交う“結束点”のおもしろさですね。

篠田 私は丸の内に日本の観光総合案内所ができるといいなと思います。そこへ行けば、地域プロデューサークラスの皆さんのような、各地域を知り尽くした「地域の達人」が、観光ガイドブックには絶対出ていないような情報を紹介してくれる。今回のフィールドワークのように、ものや場所の背景にある志を持った人に出会う旅というのは、やろうと思ってもなかなかできません。だからこそ、コーディネーター役が必要ですね。

結束点として丸の内が果たす役割

合場 丸の内朝大学には、都市と地域をつなぎ、ネットワークづくりができる人材がたくさんそろっています。今後は丸の内とどんな関係を築いていきたいとお考えでしょうか。

鈴木 丸の内には、幸せを実感する拠点になってもらいたいですね。いまの日本人は、物質面の豊かさに内面の幸福感がともなっていないといわれますが、幸せを実感できる共通項の一つが、「存在価値を認められること」だと思うんです。地域プロデューサークラスでは、受講生は地域に活性化提案をして地元の人に喜んでもらうことで、地域の人は自分たちの魅力を受講生に発見してもらうことで、お互いの存在価値を認め合い、幸せ感を高めています。都市と地域が交流し、今後も相互にハッピーになれる関係をつくっていきたいです。

篠田 まさにそうですね。都市の人は、地域にフランチャイズを持つことで、視野が広がり、いろんなものが現実感を持って見えてくると思うんです。だから、丸の内には異地域居住の案内所になってもらいたい。都会の人が抱えている、しっかりとした足場がないことへの漠然とした不安感が、地域に足を置くことで幸せ感に変わる。地元の人も自分たちの価値を認めてくれる人に出会えたことで、精魂込めてつくったものを東京でアピールしようという気持ちになれる。お互いの幸せ感が異地域の価値を知ることで高まるという関係ができれば、とてもいいですね。

合場 お話を伺って、これから丸の内は、あらゆるものの結束点として、都市と地域、地域と地域をつなぐ、触媒的な役割を担っていくべきだと強く感じました。都市と地域が連携を深め、ともに新しい価値を創造していければと思います。本日はありがとうございました。

※本記事は『丸の内朝大学YEAR BOOK2011-2012』に掲載された内容を再編集したもので、肩書き、名称等は2012年2月取材当時のものです。


鈴木英敬(三重県知事)

1974年生まれ。東京大学経済学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省し、中小企業支援など地域活性化を担当する。2006年には内閣官房参事官補佐として教育再生や地球環境問題に取り組み、2008年に退職。2011年より現職。

篠田昭(新潟市長)

1948年、新潟市流作場生まれ。上智大学外国語学部卒業。新潟日報社に入社し、編集局報道部長代理兼編集委員、論説委員兼編集委員などを歴任し2002年に退職。同年、新潟市長選に出馬し当選。2度の再選を果たし現職。

合場直人(エコッツェリア協会 副理事長)

三菱地所(株)常務執行役員。千代田区街づくり方針をふまえて具体的な街づくりを考える、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会幹事長。大丸有地区の環境戦略拠点であるエコッツェリア協会の副理事長も務める。

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